2017年08月08日

連載  笑う! 田舎暮らし 「ハミ(マムシ)も山の恵みなり」

(コープ自然派Tableタブル 2007年 8月号)

「あ、ハミ(マムシ)や!」
それを聞いて、私はぎゃーっと逃げる。山の人(ルビ・シ)は、「よっしゃ」と捕まえに行く。この差は大きい。捕まえられたハミは生きたまま焼酎漬けにされるのだ。山の暮らしはとても魅力的で、山のじぃやばぁたちがやっていることは一通りトライしてみたい私だけれど、ハミだけはどうも…。
 
 とはいえ、ハミもスズメ蜂もひっくるめての山暮らし。まったくそれらに出会わずに過ごすことなんて不可能だ。夜、玄関先でハミに噛まれたなんて話も聞くので、夜はなるべくサンダル履きはやめるとか、スズメ蜂なら素早い動作をしないとか、居るのが当然と考えて行動するしかない。

 先日、「今からハミ持って行くけん」と、近くのおっちゃんから電話があった。数分後、おっちゃんが一升瓶に入った元気なハミを持ってやって来た。瓶には半分ほど水が入れられ、このまま2週間ほどおいてお腹の物を出させるという。瓶の中にいるとはいえ、そのふてぶてしい顔つきと毒蛇の威厳、隙あらば逃げ出してやろうという狡猾そうな目つきに、すっかりびびる私。「子どもにも、本物をよう見せとかなあかん」とおっちゃん。子どもらも興味津々、でもちょっと顔を引きつらせながら「うわぁ~…」と見入っている。「これ、やるけん」とおっちゃんはその目つきの悪いハミをおいて帰っていく。

 それから2週間、生きたハミが家にいる、というだけでドキドキしている私たちに、その生命力を見せつけるように瓶の中で子どもを2匹産んだ(ハミは卵を産まないのだ)。何かちょっと感動…。でも、子ハミでも噛まれたら猛毒らしい。

 餌を食べずに少し弱っているとはいえ、母子ともに元気なまま、次は水を捨てて焼酎で漬けなければならない。このときよく噛まれるらしい。山の暮らしの登竜門、一度はチャレンジを、と張り切る連れ合いだが、家族の猛反対を受けてやはり断念。「すみませ~ん」と焼酎とハミ入りの瓶を持って近所の名人にお願いに行った。名人の手に掛かって、文字通り浴びるように焼酎を飲んだハミはようやくご臨終、つい手を合わせてしまう。

 数年熟成させたハミの焼酎漬けは、飲んでもちろん切り傷などの外用にもよく使われてきたようだ。その身も焼いてあぶって食べたら強壮剤にもなり、そこそこおいしいらしい。そういえば、捕まえたハミを目の前で割いて肝をそのままぱくりと食べてしまったすごいじぃもいて、そのじぃは朝から木を伐り薪を割り、日中は曾孫とキャッチボールをする。すごいパワーだ。ハミというと嫌われ者のようだけれど、山の恵みの一つともいえるのだ。

 我が家の台所にひっそりと眠るハミ焼酎。何だか生き返ってきそうな気がして厳重に蓋をしてある。私はまだまだ、ハミを追いかけて捕まえる域には到達しそうにない。
posted by pon at 06:50| Comment(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。